白蓮の喫茶店

ようこそ辺境の喫茶店へ。少しでもまったりして頂けましたら幸いです。

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寝息

某所に住むとある少年は、面倒くさいあれこれといった家庭とか何とかの事情の末に
母と祖母と川の字になって一つの部屋で寝る生活を送る事になりました。
少年は誕生日プレゼントにと携帯型音楽再生機を買ってもらったばかりで、通学中も寝るときも音楽に耳を傾けていました。

しかし音楽やラジオ以上にダイナミックなサラウンドの音声で少年の夜は演出されます。
日々奏でられる、日毎に異なるメロディ。 時には激しかったり、時には大人しかったり。
日ごと日ごとに少年の聴覚に刺激を与えてくれる、そんな素敵な存在
果たしてそれの正体は何なのか。 少年にこっそりと憑依して、見て参りましょう。

深夜、少年はふとした拍子に目を覚ましました。
普段はそれこそお昼まで二度寝三度寝するなど容易い事なのですが、今回は目がぱっちりと夜中に覚めてしまったのです。

横になっていると色んな思考が少年の頭の中を駆け巡ります。 
思春期らしい甘酸っぱい妄想……否、シミュレーションをそんな時、枕元に携帯電話を置いていたからか、左方からバイブ音が聴こえてきます。
こんな夜更けに電話とは無神経な輩もいるものだ……と呆れながらも少年は携帯を手探りで取りました。

しかし、携帯電話は着信通知はおろか電源さえついていません。
では、この音の正体はなんなのでしょうか。

少年のお母さんです。
お母さんの寝息です。

ブィィィィン ブィィィィン

暗闇の中、お母さんの寝息が左から聴こえてきます。
いずれ収まるだろうと気にせず少年は横になったままでした。
しかしお母さんの寝息は強まる一方。 留まることを知りません。

更には右方から、小川のせせらぎと小鳥のさえずりにも似た音声が聴こえてきます。
別に少年はイヤホンをつけてヒーリング・ミュージックを聴いているわけではございません。
この音声の正体は、言うまでもありません。

おばあちゃんです。
おばあちゃんの寝息です。

チュ-ン チュ-ン ンプル ンプル ピーヒョロロロ

鼻水によって押さえ込まれた鼻腔のビブラートがリズミカルなメロディを形成していたのです。
いずれ収まるだろうと気にせず少年は横になったままでした。
しかし祖母の寝息は強まる一方。 小川のせせらぎが大河の放流に、静かな森林が生命の息吹を感じさせるジャンゴゥへと景色が移り変わっていくように、留まることを知りません。

少年はふらふらと眠くて重くなった頭を揺すりながら寝床を探します。
行き着いた先はスースーという静かな寝息が聴こえる、心地よい雰囲気に包まれた和室でした。

「ん……どうした……お前も寝るか」

息子の来訪を察した父が右手で掛け布団を上げて少年を誘います。
もぞもぞと入り込む少年。
ちょっとおじさん特有の匂いがするけど、あたたかいと感じました。

「おとうさん」

「ん?」

「すき」

「なんだ急に」

安寧の一夜でした。
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